引っ越しで一番おぼえていること
引っ越しで一番おぼえているのは、千葉県の空港がある街から、実家のある中国地方の田舎に戻るときのことです。当時、私の部屋には、ものすごく大きい熱帯魚の水槽がありました。かつて、学生の頃に一瞬だけ、私の中に到来した熱帯魚ブームの時に、近所のリサイクルショップで購入したものです。
あれは、夏の暑い日でした。出るべき講義も、バイトもない日でした。クーラーのないおんぼろアパートにいても暑いだけなので、どこか涼しいところはないかと考えた結果、近くにあるホームセンターに出かけることにしました。涼みに来ただけということを悟られないように、特に必要なものもないのだけれど、大工道具のコーナーで難しい顔をして、名前も知らない道具を手にとったり、何に使うか分からない金具の大きさを比べるふりをしていました。しかし、それをするのも飽きて場所を移す事に。端から端まで歩いて、まったく興味のないガーデニングのコーナーに立ち寄ったとき、その一角に熱帯魚コーナーがあるのに気づきました。それほど興味があるわけでもなかったのですが、水族館に行った気分になれるかな?と、のぞいてみると、そこになんともかわいらしい魚が泳いでいたのです。ニョロニョロとした、シマシマの体に、まんまるな目をしたやつでした。値段は…とても買えないことはないのですが、魚を飼う道具一式をそろえるほどの余裕は、ありません。「残念…」と肩を落として家路につきました。
その帰り道、ちょっと用を足したくなって、パチンコ屋によりました。そして、トイレを借りたお礼にと、100円だけ、玉を打って帰ろうとしたところ、なんと、777の大フィーバー!お礼の気持ちの100円がドル箱3箱になって帰ってきたのでした。気づくと、ホームセンターで熱帯魚を飼うのに必要な道具一式と、さっきのニョロニョロ君を購入していました。そのニョロニョロ君と、いかにも熱帯魚的な色使いの魚、そして、水槽に付くコケを食べるという150円の魚を買って帰ったのです。
それから、三年…水槽の中には、コケを食べる魚だけが住んでいます。買った時は1.5cmだったのが、22cmになって。その魚はプレコという種類で、なんともぬけた顔をしたやつです。さて、いよいよ引っ越しとなったときに問題は発生しました。水槽に水を入れたまま運ぶことはできません。しかし、ここまで一緒にやってきたプレコにサヨナラを告げるのもつらい。どうしたものかと考え、プレコの入る大きさで、水がこぼれないように密封できる容器と、スポーツの後に吸う酸素ボンベを買ってきました。
まずは、プレコに容器の中に入ってもらい、途中、酸素を追加しながら手荷物として飛行機に同乗して(当時は、水が入った容器も機内に持ち込めた)、一気に引っ越し先に飛ぶという方法を取ったのです。現地で、とりあえずポリバケツを借りの宿としてもらい、私はとんぼ返り、水槽を片付けて他の荷物と一緒に引っ越し便で送る手配を済ませ、またまたすぐに引っ越し先へ。
今から思えば、とんでもなくメチャクチャな方法でした。そのかいあってか、プレコは40cm代まで成長し、天寿をまっとうしました。